寄与分

1寄与分とは

寄与分とは、相続人に相続財産の維持や増加に特別の貢献があった場合、相続財産の一定割合又は金額を相続財産から控除し、これを当該相続人が相続分とともに受け取ることのできる制度をいいます。

2寄与分権者

寄与分権者は相続人に限定されています。
相続人以外の被相続人の親族については、平成30年の民法改正により特別寄与料の制度が設けられました。

3寄与分の要件

(1)寄与行為

寄与行為として、①被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、②被相続人の療養看護、③その他の方法のいずれかがあることが必要となります。

(2)特別の寄与であること

寄与行為は、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を越える貢献であることが必要です。
そのため、夫婦間の扶助義務、親族間の扶養義務・互助義務の範囲内の行為は、特別の寄与にならないとされています。

(3)被相続人の財産の維持又は増加があったこと

被相続人の財産の維持又は増加という経済上の効果をもたらしたことが要求され、精神面での援助や協力があっても寄与分は認められません。

4寄与分の算定

寄与分の算定については、いくつかの類型に分類し、類型ごとに適した算定方法により算出するのが相当とされています。
寄与分の類型には、①家事従事型、②出資型、③療養看護型などがあり、類型ごとにどのように相続財産の維持・形成に寄与したと評価できるかを考え、寄与分について算定していくことになります。

5寄与分を定める手続き

(1)協議

寄与分は、まずは共同相続人間の協議によって定められることとされています。
協議の結果について必ずしも書面を作成する必要はありませんが、後日の紛争を避けるため、協議の結果は書面に残すのが望ましいといえます。

(2)調停

寄与分について協議により決めることができないときは、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。
遺産分割について家庭裁判所で調停が行われているときは、寄与分を定める調停も同じ裁判所で併合して行われることになります。
寄与分を定める調停が不成立となったときは、寄与分を定める審判の申立てがあったものとみなされます。

(3)審判

寄与分について協議により決めることができないときは、家庭裁判所に対し審判の申立てをすることができます。
遺産分割と寄与分について審理が行われるときは、併合して審理をしなければならないとされています。


特別寄与料

1特別寄与料とは

平成30年の民法改正により、被相続人の親族が財産の維持、増加について特別の寄与をした場合、相続人に対して寄与に応じた額の金銭(特別寄与料)を請求することができるようになりました。

2請求権者

特別寄与料を請求できるのは被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)で、相続人、相続放棄をした者、欠格事由に該当するもの排除により相続権を失った者を除きます。

3特別の寄与とは

特別の寄与といえるためには「無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与」をしたといえることが必要です。

①無償

労務の対価を受けとっている場合には無償とはいえません。

②労務の提供

「療養看護」というのは労務の提供の例として挙げられているものなので、その他の労務であってもこれに含まれる可能性があります。

③財産の維持又は増加

財産の維持又は増加が必要とされるため、精神的ケアに尽くしただけであると評価されてしまうと、これにあたらないことになります。

④特別の寄与

「特別」の寄与にあたるといえるかは明確な基準がなく、寄与分における特別の寄与とは異なるものであると考えられています。

4請求方法

まずは相続人と協議し、協議がまとまらないときや、そもそも協議できないときは、家庭裁判所に対し協議に代わる処分を請求することができます。
家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他の一切の事情を考慮して特別寄与料の額を定めるとされています。
家庭裁判所への請求は、相続の開始及び相続人を知ったときから6か月、被相続人の死亡から1年という期間制限がありますので注意が必要です。

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