1遺産分割とは
遺産分割とは、遺産について、個々の相続財産の権利者を確定させる手続をいいます。
2遺産の分割の手続の種類
遺産分割の手続には、①遺言により分割の方法を指定する分割、②相続人間の協議による分割、③調停による分割、④審判による分割の4種類があります。
(1)遺言による分割
被相続人は、遺言で遺産の分割方法(どの財産を誰にあげるか等)を定めることができます。
また、被相続人は、遺言で、遺産の分割方法を第三者に委託することもできます。
平成30年の民法改正により、遺言によって相続分の指定や遺産分割方法の指定を行った場合でも、法定相続分を超える部分については登記を備えなければ第三者に対抗できないとされました。
(2)協議分割
相続人同士の話合いにより、全員の合意により遺産を分割することができます。
遺産分割協議書を作成することになりますが、金融機関へ提出する必要のある書類、不動産の登記を移すのに必要となる書類などもあります。
(3)遺産分割調停
相続人同士で合意することができないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停では、相続人同士が調停委員を通じて協議し、当事者が合意に達して調停調書が作成されると調停成立となります。
一方、合意が成立する見込みがないときは、調停は不成立となります。
(4)審判分割
遺産分割の合意ができないときは、家庭裁判所に遺産分割の審判を申し立てることができます。
ただし、調停を行うことなく審判を申し立てても、調停に付されるのが一般的です。
また、調停が不成立で終了した場合には、調停の申立てのときに審判の申立てがあったものとみなされ、審判手続きが開始されます。
審判においては、裁判所が遺産分割について判断を行うこととなります。
また、これまで相続開始後、遺産分割前に財産が処分された場合、その処分財産をどのように処理すべきか規定がありませんでした。
3遺産分割についての法改正
(1)遺産分割前の処分財産
これまで、相続開始後、遺産分割前に財産が処分されてしまった場合について、その財産をどのように扱うか規定がありませんでした。
平成30年の民法改正により、共同相続人によって相続開始後に処分された財産についても、①処分財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたこと、②処分財産を共同相続人の1人または数人が処分したこと、③処分財産を処分した共同相続人以外の共同相続人全員が、処分財産を遺産分割の対象に含めることに同意していることという条件を満たせば、処分財産も遺産として存在しているものとみなされることとされました。
(2)遺産の一部分割
平成30年の民法改正により、遺産の一部分割が明文で認められることになりました。
ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利害を害するおそれがある場合は認められないとされています。